提携建築士のメッセージ・コラム「住まい方の周辺」

住まいづくりの関わる専門家である建築士たちが、住まい方・暮らし方に関わる情報を提供します。

  • 4月に迫った法改正・住宅の規制強化

     提携建築士 石丸正己さん

     この4月から住宅の省エネ基準(改正建築 物省エネ法)が努力義務から適合義務へと改正されます。また合わせて建築基準法も改正され4号特例 (木造2階建ての緩和措置)が規制強化されます。建築確認の必要な全ての建物(10 ㎡以下の増改築は除く)が対象で、4月1日以降に着工する建物が適用されます。
     この動きの端緒は2021年の国連気候変動枠組条約国際会議 COP26グラスゴー気候合意で 、パリ協定に続いて「2100年末までに世界平均気温の上昇を1.5度に抑える」という目標が明記され、この目標を実現する為「2050年にカーボンニュートラル(CO2 排出実質ゼロ)を達成する。」ことが求められ、国の施策として今回の大規模な法改正となった訳です。
     4月から適合義務になると、設計する建物の省エネ基準適合性判定を行ない、適合性を審査機関で審査を受ける事が義務付けられます。適合性判定を外皮性能(断熱性の強化)と設備機器等の1次エネルギー消費量で評価します。省エネ基準は今後、段階的に引上げられる想定となっています。
     さらに建築基準法の改正ですが、建物の省エネ化(断熱材等の増強)に伴い建物の重量が増える事が想定される為、耐震基準を改正し耐震性のチェックを厳しく審査する必要があり「4号特例の見直し」(木造2階建ての規制強化)を行なう事としたという流れです。
     新築だけでなく大規模な模様替えや耐震改修でも適用される可能性があり、4月以降しばらくは行政・審査側も含めて混乱が続くのではないかと言われています。
     東京都は再生可能エネルギー利用促進区域制度を策定し太陽光発電、太陽熱利用の設備設置について高さ制限を緩和するなど改正に伴い色々な施策を打ち出しています。
     建築基準法等の法令は社会情勢に合わなくなった部分は適宜改正していくべきだと考えますが、規制強化が先行し数値で評価しづらいものは切捨てられてしまう心配があります。設計者は単なる数字合わせでなく、これまで以上に、住む人にとっての快適な住まいとは何かを、住み手とともに考える事がなおいっそう必要になってくると思っています。

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