おいしい空間・その38/吹抜け

提携建築士/長谷川えいこさん・武山肇さん

住宅の中に「おいしい空間」を生み出す設計を心掛けている我々は、吹抜けとロフトをつくることがとても多いのですが、今回は吹抜けについて、次回は吹抜けとロフトをセットで考えることで、「おいしい空間」になる理由をお伝えしたいと思います。

吹抜けは、狭小住宅では床面積が稼げずもったいないイメージがありますし、冷暖房効率が悪いのではと心配されることもあります。しかし、様々な状況を改善するために、あえて吹抜けをつくることで住環境がより良くなることも多いのです。

特に東京では、南側の隣家が迫っていて、太陽光が差し込みにくい立地も珍しくありません。
事例は、まさにそのような敷地に建つコンパクトな住宅です。普通に採光したのでは1階のリビングに太陽光を届けることができません。この住宅では敢えて南側の小さな吹抜け空間の中に、透けたデザインの階段を設け、2層分の高さから階段越しの採光を計画しました。そうすることで普通では入らない光を、1階リビングに届けることができました。

冷暖房効率に関しても、吹抜け空間と家全体の空気を循環させるダクトシステムを使うことにより、効率よくヒートショックを少なくすることができました。

吹抜けを設けることにより、普通では光の届かない奥まで日差しを届け、また空間の高さを利用した自然な空気循環も作り出すことができます。コンパクトな住宅でも視覚的な解放感と広がりを与え、ヒートショックの少ないおいしい空間が生まれます。

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