建築業界全体が大工不足に直面

提携工務店 安田佳正さん

■建築業界全体が大工不足に直面

 ここ数年、現場でいちばん実感するのが「大工が足りない」という事実です。全国の工務店が同じ悩みを抱えています。

 数字で見ても状況ははっきりしています。住宅分野の資料では、大工は長期的に減少し、2020年時点で約30万人と“20年で半減”してしまいました。さらに、大工の高齢化が進んでいます。建設業全体を見ても、就業者は1997年をピークに減り続け、2024年は477万人まで減少したというデータがあります。

 つまり、現場が忙しいから足りないのではなく、働く人の“母数”が減り、ベテランが多く、若手が薄い。こうした社会的な構造のなかで、私たちは家を建てています。今の大工不足は「景気の波」ではなく、社会のかたちそのものが生んでいる問題だと感じます。

■なぜ大工が足りなくなるのか

 大工不足の背景には、いくつもの要因が重なっています。いちばん大きいのは高齢化です。建設業は55歳以上の比率が高く、若い担い手が薄い構造が続いています。

 もう一つは、「入り口」と「定着」です。若い人が入ってこない、入っても続かない。仕事の大変さだけでなく、現場の不規則さ、将来像の描きにくさも影響します。若い世代ほど「休みが少ない」「賃金が低い」といった就労環境の課題を挙げ、離職率が高いのが現状です。夏場の暑さも大きな要因ではないかと私は考えています。

 加えて、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が本格適用されました。これは労働環境を改善するうえでは必要なことと考えられますが、一方で、短期的には「限られた人手で段取りをより厳密にする」ことが求められます。

 人が減る、若手が続かない、働き方は変わる。三つが同時に進むからこそ、現場はじわじわと厳しい環境になり、経営側としても打撃を受けています。

■技術力のある大工を確保する難しさ、経験がそのまま品質になる仕事

 大工は、ただ人がいれば成り立つ仕事ではありません。木の性質を読み、納まりを考え、現場で判断し、仕上げに責任を持つ。現場での経験がそのまま品質になる世界です。

 だからこそ「技術力のある大工」を確保するのは、さらに難しいと言えます。住宅業界では、一人親方の約半数は60歳以上で、若手の確保が困難な状況です。同時に「技術が継承されなくなっている」「教育する余裕がない」といった声が年代を問わず多いとされています。

 若い大工を育てるには時間が必要です。しかし現場が忙しいほど、育成に割ける時間は十分にとれず、現場教育だけでは限界が出やすいのが実態です。また、社員大工の数が少なく、個人事業主として直接工務店等と契約を結ぶため、教育の仕組みを持ちにくいという課題も見えています。技術者の不足は、単なる人数不足よりも、家づくりの根幹に響く問題だと感じています。

■大工不足の行く末、2035年には約15万人に

 技術を持つ大工を確保していくうえで、今後については、かなり厳しい見通しも出ています。国土交通省が2025年10月に発表した「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会とりまとめ」の資料によると、大工就業者数が2035年に約15万人(2020年の約30万人から半減)という見込みが示されています。建設技能者数が今後減少し、「不足が深刻化する」という状況が目前に迫っています。

■社会全体で取り組むべきテーマ

 恒久的な大工不足に打つ手はないのでしょうか。高い大工技術に評価を受け、ニーズが高まっている一方で、慢性的な人手不足に困っている状態が続いていますが、それでも常用大工がいて、長く働き続けてくれているのは、大工自身が「本物の木にふれる経験」を大切にしてくれているからです。

 技術者の働き方を整え、段取りと生産性を上げ、育成を仕組みにし、地域の現場を守る。これは工務店の努力だけでなく、社会全体で取り組むべきテーマだと思います。

 家は暮らしの土台です。その土台をつくる人がいなくなる未来だけは、なんとしても避けたい。そう思いながら、私は今日も現場に立っています。

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